「銃声だ!」パニックになったショッピングモールを命がけで逃げ出した日

「銃声だ!」パニックになったショッピングモールを命がけで逃げ出した日

「Kids areaでおベビと遊んでる?俺ちょっと他の店見てくるわ。」

もしかしたら、これが妻と子どもとの最期の会話となったかもしれません。

妻と子供と別れてから10分後、僕たちがいるショッピングモールは、銃撃から逃れようとする人々で溢れ、パニックに陥りました。

今回は、ナッシュビル旅行中に出くわした衝撃の事件についてお話しします。

ナッシュビル旅行へGo!

「金曜日授業ないなら、どこか旅行に行こうよ。飛行機安い時を探してさ。」

何気ない妻の一言で、僕たちのナッシュビル旅行計画は始まりました。

シカゴ大学は冬学期の最中ですが、僕は月、水、木曜日しか授業がなく、毎週末3連休という夢のような日々を過ごしています。

祝日が重なったわけでもないのに3連休が取れるなら、どこもそれほど混んでないから旅行にはベストなはずだ。

そう考えた僕たちは、旅行に行くことにしました。

アメリカの観光地を色々検索しましたが、イエローストーンやグランドキャニオンといったアウトドアな観光地ばかり。

もちろんこれらはいつか行きたい観光地ではあるのですが、1歳半の娘を連れているとアウトドアは厳しいということでどこに行こうか迷っていました。

そんな時、思い出したように妻が、「そういえば、ナッシュビルにいいホテルがあった気がする」と言い始めました。

ナッシュビルとはテネシー州の州都です。

カントリーミュージックの都市として有名であり、多くのアメリカ人が音楽イベントのためにナッシュビルを訪れます。

SNSにおすすめのホテルとして出ていたそうなのですが、場所が場所なので行くことはないだろうと思って諦めていたところ、シカゴからなら行けるのでは?ということで思い出したそうです。

そして、見つけたホテルがこちら。

Gaylord Opryland Resort & Convention Centerというところです。

マリオット系列ですので、マリオットのクレジットカードを持っていればお得に泊まることができます。

こちらは巨大な屋内型ホテルで、巨大な敷地の中に4つのエリアがあり、プールや植物園、食事を楽しむことができます。

ホテルの詳しい様子はこちら。

旅行の楽しい側面
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【旅行記】アメリカ最大級の屋内型リゾートホテルに行ってきました【Gaylord Opryland】 ワクワクを取っておきたいから、あえて色々調べないようにしてる! 用意周到な妻をそう言わしめるほどの期待感。 ……

近くにあるショッピングモールへ

金曜日にホテルに到着し、迎えた土曜日。

午前中にプールを楽しんだ僕たちは、近くにあるショッピングモールに行くことにしました。

Opry Mills
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ショッピングモールはホテルの隣にあるのですが、いかんせん土地が広いため、歩いて20分ほどかかります。

やっとの思いで、ショッピングモールに到着しました。

ショッピングモールでは、大きな映画館、VRゲーム施設といった近代的な施設、テネシーのお土産屋さん、ミュージックストアなど特色ある施設があるほか、アウトレットも兼ねており、プーマやナイキといったスポーツブランドのアウトレットストアが数多くあるとても面白い施設でした。

マダムタッソーの蝋人形館もあります。

ひとまずお腹が空いていたので、ショッピングモールの中にあるフードコートでランチ。

ランチを済ませた後、再びショッピングモールをぶらぶらしていました。

アウトレットのストアがたくさんあるということで、僕は色々散策したかったので、妻と子供がキッズエリアで遊んでいる間に一人でぶらぶらすることにしました。

異変を感じ、モールを飛び出す

異変を感じたのは、一人になってから10分後、モールの通路を歩いていた時でした。

前にいる人たちが何やら不安そうにこちらに向かってきます。

僕はその時、マリファナのような匂いを感じました。

「誰かモール内で薬物をやった人でもいるのかな」

それくらいなら別に問題ないだろうだと進もうとしたその時です。

人々が何かに怯えたように走り出してくるのに気づきました。

ある人は店の中に逃げ、ある人はモールの外に出ていきます。

ショップの店員が店のドアを閉め、鍵をかけようとしているのを見て、さすがにこれはおかしいと感じました。

みんな、何かから逃げている。

訓練やテレビの撮影とも違う、異様な光景です。

火事でもあったのだろうか。

とりあえず動かなければと思い、近くにあった店に入ろうとしましたが、「もし火事があったのなら、建物の中にいるのはまずい。とにかく外に出よう。」と考え、急いでモールの外に出ました。

モールの外にはたくさんの人がいて、中からも続々と人が逃げ出してきます。

さらには、モールを出てからも止まることなく、車に乗って逃げるように急いで帰ろうとしているのです。

あまりにも急いで逃げようとしているので、僕は混乱しました。

なんで、みんなこんなに慌てているんだ?

テネシー州に隕石でも落ちてくるのか?いや、それならいくら車でも逃げ出せないだろう。

それとも竜巻が来るのか?いや、それならむしろ建物の中の方が安全では?

混乱すると同時に、妻と子供のことが頭に浮かびました。

妻と子どもは大丈夫か?

このパニックに気付いているのか?まだ中にいたらどうしよう?

人々の慌てぶりに明らかに生命の危険がある何かが起こっていることだけはわかっていたので、妻と子どもにもしものことがあったらどうしようと思い、焦りました。

とりあえずLINEで電話しましたが、つながりません。

しかし、スマホを見ると、妻からも着信が入っていました。

とりあえず、妻も異変には気付いている

そのことにまず安心しました。

モールの外に出たということだったので、妻と子どもの元へ向かうことにしました。

銃を持った人がいるらしい

妻と子どものもとへ向かう途中も続々と人がモールから出てきており、中には泣き叫ぶ人もいます。

これはもしかして、銃の乱射でもあったのか?

銃の所持が許されるアメリカであれば、誰かが銃を乱射したとしても不思議ではありません。

どの人も顔が青ざめており、必死で逃げようとしています。

尋常ではありません。

別の入り口に人々が溜まっており、その中の一人がこう叫んでいるのを聞きました。

「Someone was shooting!!」

マジかよ!

どうやら本当に銃撃があったみたいです。

ある人は、家族の姿を見つけて安堵のあまり号泣していました。

ある人は、泣きながら家族に電話しています。

一応外には出たし大丈夫だろうが、早く妻と子どもの元へ行かないと。

急いで、妻と子どもがいる出口へと向かいました。

なんとか合流し、妻にどうやら銃乱射があったようだと伝えました。

モールのすぐ横にある幹線道路では何台ものパトカーが猛烈なスピードでこちらへ向かってきていました。

泣き叫ぶ人、ダッシュで車に向かう人、不安そうな顔でスマホを見つめる人。

どう考えてもパニックです。

こんなところにはいられないと、ホテルに戻ることにしました。

どこに銃を持った犯人がいるかわからないので、モールの外を歩くことも怖かったですが、とにかくこの場を離れないとということで急いでホテルに向かいました。

続々となされる報道

ホテルに向かいながらだんだんと冷静になってきた僕は、そもそも銃声など聞こえなかったなあと思い返していました。

妻に聞いても、銃声は聞こえなかったといいます。

妻も何が起こったかはわかりませんでしたが、キッズエリアにいた人たちが何かを察したように急いでモールの外へ走り出したため、子どもを抱えて必死にモールの外まで走ったということでした。

本当に銃乱射があったのなら、銃声が聞こえてもおかしくないし、犯人はモール内にいるのだから今も危険な状態にあるはずだ。

犯人は今ごろどうしているのだろう、そう思いながらホテルに帰りました。

ホテルに向かう途中、パトカーが猛スピードでモールまでやってきました。

カウボーイのような帽子をかぶった警察官がたった一人でモールの中に乗り込んでいきます。

あれは覚悟を決めた顔だ。

アメリカでは、銃乱射の犯人に立ち向かい殉職した警察官のニュースを何度も見かけますが、まさに殉職を覚悟でモールに入る警察官の姿に心を打たれました。

その後も続々とパトカーがモールに来て、あたりはパトカー一色になりました。

なんとか無事にホテルに辿り着いた僕たちは、これはニュースになっているはずだとネットの情報を探しました。

すると、テネシー州のニュースメディアが続々とBreaking Newsを出していました。

Fight leads to ‘rushed mass exodus’ at Opry Mills Mall, police say

このような見出しが流れていました。

ニュースによると、実際に銃乱射があったわけではなく、モール内での口論がパニックを引き起こしたということでした。

警察も公式発表を出しており、「銃が発射された証拠はない」とのことでした。

Redditを調べてみたところ、早速人々がこの事件について話しており、モールにいた多くの人たちが情報提供していました。

最も信憑性が高いと思われたのが、下記のコメントです。

これによると、フードコート内にあったレストランでカップルの口論が起き、怒った女性が銃を取り出したことで人々がパニックになり、今回の騒動が起こったとのことでした。

つまり、銃は出されたが、発射はされなかったということです。

他方、実際に銃の発射はあったと主張する人たちもいました。

地元のニュースメディアはこぞったようにこのニュースを取り上げました。

Fight between couple leads to ‘rushed mass exodus’ at Opry Mills Mall, police say

Woman assaults boyfriend causing panic, lockdown at Opry Mills Mall, police say

一番詳しいのがこちらです。

Nashville’s Opry Mills Mall: Police Investigate Domestic Dispute

夜のニュースでもこの事件が報道されていました。

報道では、モールの飲食店に勤めていた従業員の彼女がその店に押しかけ、その従業員を殺害しようとしたとされています。

しかし、銃は発射されることはなく、従業員は無事、女性は警察が来る前にその場から立ち去ったということでした。

この騒動のせいでモールは封鎖、店に立てこもった人は2時間近くモールの中で怯えることとなり、警察はモールを封鎖して中に残った人がいないかを捜索しているそうです。

近くの道路も通行止めになり、交通もパニック状態に陥っています。

銃社会に怯えるアメリカの現実

銃の発射はなかったと警察が公式見解を出したため、ニュースではモール内の口論が人々に混乱をもたらしたというような言い方をしています。

モール内での口論が人々に不安をもたらし、人々がパニックに陥ったのだとし、実際に危険はなかったにも関わらず人々はパニックになったという論調です。

ただ、実際にその場に居合わせた身からすると、この事態はそんなものではなかったと感じます。

人々は自分が銃で撃たれるかもしれないと思って逃げたのであり、口論をしていた女性が銃を取り出したことを知ったから逃げたのではありません。

一刻も早く逃げなければ自分の命が危ない。

銃社会に生きる人たちが本能的に危険を察知して逃げ惑う様子を目の当たりにしました。

「噂が一人歩きすることで人々にパニックをもたらした」

起こった出来事に対し事後的に解説するニュースキャスターや大学教授たちといったその場に居合わせない人々には到底この時の心情はわからないだろうと思いました。

彼らだけでなく、ニュースを見る人々も同様です。

何が起こったかはわからないが、とにかく逃げなければいけない。

人間の本能が身の危険を知らせてくれることを肌で感じた経験でした。

無事で何より

これが今回僕に起こった事件の内容です。

何事もなくて本当に良かった。

無事であったことにただただ感謝しています。

今はむしろ格好の話のネタができて良かったと笑えて話せますが、それも生き残ったからのこと。

死んでいたら元も子もありません。

実際に銃の発射はあったのかということですが、警察の発表の通り、おそらくなかったのだろうと思っています。

Active Shooter!」と聞いて必死に逃げ出した状況を考えれば、私は銃声を聴いたと思う人がいてもおかしくありません。

そう主張する人が何十人何百人といれば本当に銃撃があったのだろうと思いますが、私が確認する限りそのように主張しているのは数人なので、信憑性に乏しいかと思っています。

ただ、だからといって些細な事件じゃないかとなるのではなく、モールにいた全員が命の危険を感じて必死にモールを逃げ出したあの状況は間違いなくとんでもないパニックでした。

何はともあれ、本当に無事で良かったです。

被害者が出なかったことも本当に良かったです。

幸い、妻も子どもも精神的なショックを負うことはなかったので、旅行にも支障は出ていません。

銃社会だからこそ、このようなことが日常的に起こる可能性がある。

そんなアメリカの一面を垣間見ることができた1日でした。

プロフィール

Ryo

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こんにちは、Ryoといいます。 このブログは留学記です。 このブログのテーマは、『日本にいたらできないようなチャレンジをする』こと。 留学で経験したこと、考えたこと、感じたことをレポートします。 このブログの目的は3つあります。 人脈を増やすこと 学んだことをアウトプットすること ブログを継続すること このブログが少しでも皆様の役に立ってくれたら幸いです。

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