- 2024年2月18日
こんにちは、Ryoです。
今回は、アメリカの法曹倫理試験であるMultistate Professional Responsibility Examination (MPRE)について書いていきます。
MPREは、NY Barを受ける場合、Admissionのために合格しておかなければいけない試験(試験を受けるための要件ではない)なので、ほとんどのLLM生は必ず受けることになる試験です。
Admissionに必要な最低点は州ごとに定められていますが、NY州の場合は150点満点中85点以上のスコアを取る必要があります。
スコアは偏差値方式で、平均を100として、50-150の範囲でスコアがつけられることになります。
85点を取るためには、大体6割程度の正答率があれば良いとされています。
私は2週間ほど対策して11月に試験を受けたところ、無事に基準点をクリア(100/150)することができましたので、その経験をもとに対策を残しておこうと思います。
MPREとは
MPREは、Bar合格後に弁護士として登録するための要件とされる全州共通の倫理試験です。
偏差値方式でスコアがつけられ、平均を100として、50-150の範囲でスコアがつけられます。
登録のために必要な最低点は各州で定められており、NY州の場合には85点以上のスコアを取る必要があります。
実施時期
MPREは11月初旬、3月下旬、8月中旬の年3回実施されます。
3月下旬は春休みと重なり、8月中旬の試験は本試験の直後となってしまうことから、多くのLLM生は11月初旬の試験を受けることになります。
11月の試験を受ける場合、9月半ばが登録の締め切りなので、忘れないように登録する必要があります。
あくまで登録要件なので本試験後にMPREを受験することも可能ですが、アメリカ本土でしか受験できないため、LLM生は基本的に本試験前にMPREを受験します。
試験形式
試験は4択の選択式問題で、全部で60問あります。
試験時間は2時間なので、1問あたり2分のペースで問題を解くことになります。
当然ですが全て英語なので、よっぽど英語に慣れていない限りギリギリの時間制限だと感じることが多いと思います。
TOEFLやIELTSと同じように、パソコンの前に座って各自問題を解くことになります。
ノー勉でいける?
MPREについて理解したら、次は具体的な勉強です。
MPREの対策について、まず初めに気になるのが、そもそも勉強が必要なのかという点です。
所詮は倫理試験なので、常識でなんとかなるのではと考える人もいるのではないかと思います。
実際、インド人のLLM生と話したところ、2日前の対策で大丈夫だよということを言っていたので、ネイティブクラスの人だとほとんど勉強しないで試験に臨む人もいるようです。
ただ、実際に試験を受けた立場からすると、日本人受験生はMPREに向けて少なくともある程度は勉強をするべきだと思います。
アメリカと日本は文化や考え方が違うので、倫理観も異なります。
また、アメリカの場合は州ごとに法律が異なるので、日本にはない問題(A州で資格のある弁護士がB州で仕事できるか、倫理違反を問われるか等)が出てきます。
このような違いを踏まえると、全く勉強せずに試験の臨むというのは得策ではなく、ある程度は勉強してから試験に臨むべきです。
Professional Responsibility(PR)の授業との兼ね合いについて
LLM生は、PRの授業を取ると思いますが、それを受けていればある程度はカバーできると思います。
私はPRを未履修のまま試験を受けましたが、それでもきちんと対策すれば問題ありませんでした。
余談ですが、私が通っているシカゴ大学のLLMは、Professional Responsibilityの授業がとても取りにくいです。
3L(JDの最終学年)の受講希望者を優先的に履修登録させ用としているのが原因で、LLM生の秋学期の履修はまず不可能です。
冬学期の履修登録で、Professional Responsibilityの授業を第一希望か第二希望にすることでなんとか席を確保できますが、それでも全員ではなく、春学期にならないと受けられない人も出てきます。
この点は、LLM生がすごく不満に思っているところです。最終的には、全員が受講できるらしいですけどね。
どのくらい勉強すれば良い?
次に、どのくらいの期間勉強すればいいのかという点です。
結論からいえば、試験2週間前からで十分だと思います。
それよりも前から始める分には問題ないですが、少なくとも2週間ほど前から対策を始めておけば十分なくらい点数は取れると思います。
Professional Responsibilityの授業を受講した後であれば、授業を通して知識が身についているはずなので、もっと少なくても大丈夫かもしれません。
後で詳しく書きますが、大事なのは対策問題を解くことです。
対策問題を解く時間さえ確保できれば勉強時間として十分です。
私の場合ですが、試験1ヶ月前からやらないといけないと思いつつも、結局勉強に本腰を入れたのは試験2週間前でした。
授業の予習もある中での勉強でしたが、空いた時間を使ってMPREの対策をするというやり方で問題なく対応できました。
アメリカの倫理試験なので、日本の法律知識が十分にあるかというのはほとんど関係ないように思います。
MPREでの目標
MPREでの目標は最低基準点を超えることです。
逆に言えば、いくらいい点を取ってもあまり意味がありません。
そのため、過剰な勉強は効率の観点から望ましくないといえます。
私が受験体験記を書いているのは、これからMPREを受ける方がもっと効率的に対策できるようになり、他のことに時間を有効活用してほしいと思ったのが理由です。
勉強方法
じゃあ、結局何をすればいいのかという話ですが、これは問題演習をするということにつきます。
具体的なやり方
具体的には、Barbriの予想問題(60問×4セット)を解きます。
時間がない人は、これだけやっていただければいいと思います。
一度問題を解いて、間違えたところを復習して本試験に臨めば、最低点はクリアできるのではないかと思います。
おすすめしない勉強方法
逆に、Barbriのビデオ講義を聞いたり、(問題集を解かずに)テキストを読もうとするのは効率が悪いのでお勧めしません。
これの何がいけないかというと、試験で問われるポイントがわからないまま知識を網羅的にインプットしようとしている点です。
おそらく、最初にテキストを読んでもわかるようになった気がするだけで、いざ問題を解いてみるとわからない点がほとんどだと思います。
それもそのはずで、そもそもどのように問われるかがわかっていないため、メリハリがついていない状態でテキストを眺めてしまっているからです。
一度でも問題を解いていれば試験での問われ方が分かるので、どのような点に注意すればいいかを意識しながらテキストを読み進めることができます。
MPREの対策については、Barbriが無料のコースを提供してくれています。
ロースクールでもBarbriの人がテキストを直接配ってくれていたりもします。
試験対策としてはこれで十分です。
テキストについて
Barbriのテキストは、網羅的な知識のインプット部分と対策問題のアウトプット部分からなります。
また、これとは別に日本語でルールが要約された日本人ノートというものがあります(Barbriのコースに付属しているわけではないです)。
Barbriのテキストと日本人ノートのいずれを使用するかは好みの問題ですが、私は時間短縮のため日本人ノートを使いました。
Barbriのテキストは結局一回も見ていません。予想問題と日本人ノートのみを使いました。
予想問題について
予想問題の難点は、時間がかかるところです。
本番と同じ60問で1セットが構成されているので、1回解くのに2時間くらいかかります。
これを後回しにしているとそもそも解き切れない可能性もありますし、復習の時間を確保できなくなる可能性もあります。
そのため、できるだけ早い段階で着手するのが良いです。
私の反省として、日本人ノートを3周ほどしてから初めて問題を解き始めたことがあります。
日本人ノートを3周してそれなりに勉強していた気になっていたのですが、実際に問題を解いてみて、その勉強が全く役に立っていなかったことに気づきました。
問題を解いてみてはじめて、何を覚えなければいけないのかがわかったという感じです。
最初から問題を解いていれば、勉強時間はさらに少なくなっただろうというのが反省です。
理想的な勉強方法
したがって、私が考える理想的な勉強法は以下の通りです。
- 問題を1回分解く
- 間違えた問題の復習
- Barbriのテキストor日本人ノートの通読
これを1セットとして4回繰り返すというものです。
時間がない場合は、「Barbriのテキストor日本人ノートの通読」の部分を省略してもらって良いです。
とにかく、4回分全て解くというのを最優先にしてください。
それと復習だけで最悪なんとかなります。
私も問題を全て解き終えた後はその復習と日本人ノートの通読しかしませんでした。
それ以上手を広げてもあまり大きな効果は得られないと思います。
ちなみにですが、私が解いた際には、予想問題のどのセットも6割ほど(36/60)くらいしか取れませんでした。
それでも本番は100/150を取れましたので、基準点を超えるという観点からは十分すぎる点数をとったことになります。
予想問題の出来は気にせず、とにかく解いてみることが大事だと思います。
実際私も6割程度しか取れずこれで本番大丈夫なのかと当初は不安になりましたが、240問を解き切ったこと、そして間違えた問題を復習しているうちに日本人ノートの内容をおおよそカバーできたことで本番はいけるのではという自信がついてきました。予想問題の出来は気にせず、とにかく解いてみるということが大事だと思います。
ここで焦って他の教材に手を出すよりも、日本人ノートを繰り返して読むという方針に徹したことが良かったと思っています。
試験当日について
試験当日はあまり特筆する点はないです。強いていえば、試験に遅れないことでしょうか。
心配だった私は、1週間前に本番と同じ時間で会場の下見に行くということをしましたが、そこまでする必要はないと思います。
また、会場の近くにホテルをとったりする必要もないと思います。
11月に試験を受ける場合は、履修している授業と被る人がいるかもしれません。
その場合には事前に教授に連絡する必要があると思いますので、そこだけ忘れないようにしましょう。
私は、運よく授業のない日に試験があったので何もせずにすみました。
持ち物
身分証明書が2つ必要です。
パスポートと学生証があれば問題ないです。
試験スタイル
試験は、TOEFLやIELTSと同じように、各自パソコンで解くというスタイルでした。
早く来た人から順に試験を受けて、終わったら帰って良いというやり方です。
私のテストは8時半からだったのですが、8時くらいに会場に着いてしまいました。
当然一番乗りでしたが、受付を済ませたら、すぐに試験を受けさせてくれました。
おかげで早く帰ることができました。
アドバイス
本番でのアドバイスがあるとすれば、わからない問題に時間をかけないということでしょうか。
上で述べた通り、6割くらい解けば基準点はクリアできますので、多少間違えたところで問題はありません。
特に最初の10問くらいは頭が働かず英語が頭に入ってこない可能性もありますので、わからない問題はとりあえず回答しておき、テンポよく進めていくことが大事だと思います。
本番の試験はBarbriの問題よりも簡単と言われていますが、私にはそこまで簡単と感じませんでした。
とはいえ、難しいとも感じなかったので特に動揺することはありませんでした。
結果発表について
試験の結果は5週間ほどでわかります。
結果が出た際には、クラスメートの誰かがWhatsAppで報告してくれると思いますので、そこまで気にする必要はないと思います。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
いろいろ書きましたが、ポイントとしてはとにかく問題演習をするということです。
テキストを読んだり講義を聞いたりする前に、まずは問題を解いてください。
それさえやっていれば基準点はなんとかなります。
試験形式に慣れることが重要で、知識を詰め込むのは余力があればで十分です。
できるだけ早く問題をとき、その上で今の自分にどのような勉強が必要かを判断し、進めるようにしてください。
僕自身余計な勉強が多かったと感じているので、今後MPREを受ける方が時間をかけず効率的に対策を進められるようになれば嬉しいです。
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プロフィール
Ryo
こんにちは、Ryoといいます。 このブログは留学記です。 このブログのテーマは、『日本にいたらできないようなチャレンジをする』こと。 留学で経験したこと、考えたこと、感じたことをレポートします。 このブログの目的は3つあります。 人脈を増やすこと 学んだことをアウトプットすること ブログを継続すること このブログが少しでも皆様の役に立ってくれたら幸いです。