- 2025年1月24日
こんにちは、Ryoです。
今回は、シカゴ大学の期末試験についてお話しします。
タイトルにもある通り、シカゴ大学の期末試験はかなり過酷です。
試験時間は長く、授業の内容を暗記するだけでは解けません。
授業で習ったことを踏まえて、自分の考えを英語で論じる必要があります。
そして、シカゴ大学では基準以下の成績を取るとLLMを卒業できないというルールもあります。
そのため、みんな必死で勉強します。
勉強はほどほどに、留学では遊びまくるぜ!
意気揚々とシカゴにやってきた学生は、試験勉強で気が狂うことになります。
LLMはそんなに大変じゃないよと先輩から聞いた人もいるかもしれません。
シカゴ大学は違います。
シカゴ大学に来るなら、覚悟を持って来てください。
どれだけ大変でも、私はシカゴ大学に行きたいんだ!
そんな志を持った方が僕は好きですし、シカゴ大学はそういう人を求めています。
ということで、そんな志ある方のためにシカゴ大学での期末試験の実態をお伝えします。
期末試験の概要
シカゴ大学のLLMは、3学期制のプログラムとなっています。
9月末〜12月初めまでが秋学期、1月〜3月初旬までが冬学期、3月下旬〜5月中旬までが春学期です。
なぜ9月末から始まるのかというと、学生にはシカゴの夏を満喫してもらいたいからだということです。
夏は遊んで、冬に勉強しようぜということですね。
とはいっても、多くの学生は秋からシカゴ入りするので、一番楽しい夏をシカゴで過ごすことができません。
講義形式
講義形式は2種類あり、レクチャーとセミナーがあります。
レクチャーは教授が講義をする一般的な授業スタイルで、学期末のテストの成績がそのまま最終成績になります。
授業での発言も多少評価されますが、1-2点上下する程度です。
セミナーは教授と学生とのディスカッションを通してテーマに対する理解を深めることを目的としており、講義中の発言やプレゼンテーション、論文(1,500 – 3,000 words)で成績が評価されます。
大部分の講義はレクチャー形式で行われます。
法曹倫理や家族法、ブロックチェーンといったマイナーなテーマがセミナー形式になることが多いです。
レクチャー形式だと履修人数が多いため講義が取れないといったことはあまりないのですが、セミナー形式は20人程度の少人数で行われるため、希望しても履修できないという事態がしばしば発生します。
履修登録
各学期が始まる1ヶ月ほど前から履修登録の時期が始まります。
講義ごとに早い者勝ちで履修登録できるものか抽選で履修登録できるものが決まっています。
早い者勝ちの講義は、履修登録の期間になればすぐに登録することができます。
抽選のものは対象となっている一覧の講義の中から、期限までに第一希望から第五希望までを選ぶことになります。
第一希望から優先的に抽選で割り当てられ、指定人数を超えるとWaitlistになり、他の人が講義をdropするのを待つことになります。
LLM生は、法曹倫理など絶対に受けなければいけない講義や興味のある少人数のセミナーを上位希望で出し、残りを適当に埋めるといった感じになります。
法曹倫理(Professional Responsibility)について
シカゴの場合、JD生がLLM生より優先されるため、法曹倫理の講義を取るのが非常に大変です。
秋学期は第一希望にしてもおそらくwaitlistになると思います。
Class of 2025では秋学期で法曹倫理の講義を取れた人はいませんでした。
僕も第一希望で出しましたが、waitlistになりました。
冬学期に第一希望で出してようやく履修できました。
第二希望でも法曹倫理をとれたLLM生もいましたが、冬学期ですらも法曹倫理を履修できないLLM生が一定数いました。
さすがに春学期には履修できると思いますが、それでも履修できるまでは上位に法曹倫理を入れ続けなければならず、興味のある授業を上位にすることができなくなってしまいます。
少なくとも冬学期は法曹倫理の授業を上位(できれば第一希望)に入れるようにしましょう。
法曹倫理に加え、シカゴ大学は経済学が有名な影響で法と経済学の講義に人気が集中します。
1Lの講義について
1Lの講義も、LLM生も少数ですが履修できます。
必修講義ですのでかなり大変ですが、せっかくの機会ですので一つは取ってみることをおすすめします。
僕もCivil Procedureの講義をとりましたが、非常に勉強になり取ってよかったと思っています。
1学期に取れる単位数は最大で15までです。
私は秋学期に14単位(そのうち1単位は通年で取得)を取りましたが、これは多い方だと思います。
成績分布
成績は特殊な付け方がされており、以下のように成績が割り振られます。
180-186 A
174-179 B
168-173 C
160-167 D
155-159 F
Fを取ったら落第です。
レクチャーかセミナーかで若干異なりますが、概ね177点か178点が中央値(成績を小さい順に並べてちょうど真ん中に来る値)になるように調整されます。
取得した単位の平均成績が下記のいずれかに該当する場合、成績優秀者となります。
Highest Honors (182+) 0.4%
High Honors (180.5+) 3.8%
Honors (179+) 19.0%
残念ながら、シカゴ大学ではLLM生が成績優秀者になることはないそうです。
そのため、上記の基準はもっぱらJD生に関係する内容となります。
卒業要件
LLM生にとって大事なのは卒業要件の方です。
LLMプログラムの卒業要件として、履修した講義の成績の平均が170を超える必要があります。
170を下回ると卒業ができません。
170というのはCのおよそ中間となる値ですので、そこまで低い成績ではありません。
この要件があるためにLLM生は必死に勉強することになります。
そのせいか、ここしばらくは卒業できなかったLLM生はいないそうです。
また、取得単位数にも卒業要件があります。
LLMを卒業するためには合計で27単位、NY Barを受けるためには合計で30単位以上を取得する必要があります。
講義の単位数
シカゴ大学の講義の単位数は大まかに以下の通りです。
1Lの必修講義:4単位
一般的な講義及びセミナー:3単位
一部のセミナー:2単位(論文のWord数により3単位にもできます)
短期集中講義:1単位
隔週の講義やGreenberg Seminar:通年で1単位
1Lとは、JDの1年生を指します。
1Lは、Civil Procedure、Evidence、Criminal Procedureといった必修講義を1年通して受けます。
彼らには自由はありません。
有名法律事務所への就職や教授職を得るためには1Lで良い成績を取らなければいけません。
そのため、1Lは必死で勉強しています。
2Lや3Lになると成績は重要ではなくなるので、それほど成績にこだわらなくなります。
LLM生も少数ですが、希望すれば1Lの講義を受けることができます。
僕は秋学期にCivil Procedureの講義を受けました。
LLMではたくさんの判例を読まされます。
その多くが民事裁判であり、Civil Procedureを受けていないとそもそも言葉の意味がわからないということになります。
そのため、大変ではありますが、Civil Procedureの講義を受けることはその後の学習をスムーズにするためにもおすすめです。
学期ごとの講義数
1Lを除く通常の講義は3単位です。
LLM生が受講する多くの講義は3単位になります。
したがって、卒業要件を満たすために1学期あたり3~4つの講義を受講することになります。
多く取りすぎると予習が大変ですので、日本人は3つがちょうどいいと言われています。
しかし、卒業要件があるため、どこかの学期で4つ取らないといけません。
それをどこで取るかは人次第といったところです。
多くのLLM生は、秋学期は様子見、春学期はNY Barの準備もあるからということで冬学期に4つの授業を取ることが多いです。
僕の場合
僕はというと、秋学期に4つ(+1)の授業をとりました。
1LクラスのCivil Procedure(4単位)、Business Organization(3単位)、U.S. Legal Research and Writing(3単位)、Competitive Strategy(3単位)、Greenberg Seminar(通年で1単位)の構成です。
Civil Procedure、Business Organization及びU.S. Legal Research and WritingはNY Barの要件を満たすために取りました。
NY Barを受けるためには指定された講義を受ける必要があるため、いずれの学期の時間割も指定講義で埋まってしまい、興味のある講義は1つや2つしか取れません。
Competitive Strategyは、Chicago Booth(MBA)の教授が教えてくれる講義で面白そうだったので受講しました。
法律ばっかりで時間割を埋めても退屈ですからね。
Greenberg Seminarは、通年の講義で各学期1~2回教授の家に集まってあるテーマについてディスカッションする講義です。
LLMは数人しか枠がなく毎年激戦となりますが、運良く当選したので受講することにしました。
Business Failureというテーマで企業の失敗事例についてディスカッションするセミナーです。
4つの試験は大変!
Greenberg Seminarを除き、僕の取った講義は全て期末試験があったので、合計で4つの試験を受けることになりました。
これはなかなかにクレイジーで、ほとんどの生徒は2つ、多くても3つしか試験を受けないように調整します。
僕は履修当時何も考えていなかったので、興味の赴くままに履修登録をしたところ、このようになってしまいました。
おかげで大変な思いをすることになりました。
試験形式
シカゴ大学の試験は以下の4タイプがあります。
Open Book Exam
Open Book / No Internet Exam
Closed Book Exam
Take-Home Exam
Open Book Exam
何でも参照できる試験です。
講義のテキストやノート、アウトライン(講義の内容をまとめたレジュメのようなもの)だけでなく、インターネットも閲覧することができます(Chat-GPTなどのAIは禁止)。
この試験タイプはあまりありません。
インターネットは使えることになっていますが、インターネットを使っても役に立たないからこそ、このタイプの試験形式が許されているとも言えます。
Open Book / No Internet Exam
インターネットを閲覧することはできないものの、それ以外の資料であれば全て参照可能な試験です。
ロースクールの試験はほとんどがこのタイプです。
テキストやノート、アウトラインや辞書などありとあらゆるものを持ち込んで試験を受けることになります。
Closed Book Exam
いかなる資料も持込禁止、日本人が想像する一般的な試験です。
このタイプの試験はほとんどありません。
JD生ですら文句を言うほど、このタイプは厄介です。
Take-Home Exam
家に持ち帰って受けるタイプの試験で、指定された期間中であればいつ開始してもいい試験です。
時間が長いものが多く、分量が多いのが特徴です。
試験時間
試験時間は1Lなど一部の講義は4時間、それ以外は3時間です。
Take-Home Examは試験によりますが、3時間、4時間、8時間のものがあります。
公式にはそうなっているのですが、ネイティブならともかく非ネイティブはこの時間では到底終わりません。
そこで、非ネイティブのLLM生には特別に通常の1/3の時間が追加されます。
したがって、4時間のテストであれば5時間20分、3時間のテストであれば4時間がLLM生の試験時間となります。
長すぎる!と思うかもしれませんが、これでも時間が足りません。
おそらく時間いっぱいまで答案を書き続けることになるでしょう。
答案の作成方法
答案はPCで作成します。
Exam4という特殊なソフトウェアを使って答案を作成します。
ラップトップのみで、外部モニターやタブレットを使用することはできません。
使用するPCについて
一画面しか使えないとなると、画面サイズはどうすればいいか気になる人も多いのではないでしょうか。
私が使っているPCは13インチMacBook Airです。
軽さを優先したためこのPCにしましたが、13インチで不自由を感じることはありませんでした。
15インチや16インチのPCにすれば表示領域が広くなるので2画面表示など便利でしょうが、その分PCが重くなり普段の持ち運びが大変です。
ここは個人の好み次第かと思います。
タブレットで答案を作成しようとするのは現実的でなく、お勧めしません。
タイピングも重要
答案は大体3,000wordsほどになるので、英語でのタイピングに慣れておく必要があります。
できればキーボードもUSキーボードにしておきましょう。
Open Book Examであっても資料からのコピペは禁止されており、答案は全て自分でタイピングしなければなりません。
私の体験談
以上がシカゴ大学の期末試験の概要です。
ここからは、僕が受けた秋学期の試験について話していきます。
U.S. Legal Research and Writing
これは僕が最初に受けた試験です。
この講義はNY Barを受けるための必修講義となっており、ほぼ全てのLLM生が受講します。
アメリカの法体系の基礎知識やリサーチツールの使い方、引用の仕方といった基礎的な事項を学びます。
講義中の課題としてメモランダムの作成があり、あらかじめ配られた判例を分析して作成するClosed Memorandumと自分で関連する判例を調べて作成するOpen Research Memorandumの2つのメモを作成することになります。
試験内容
昨年までは、Closed Memorandumのようなものを作成するのが期末試験の内容でした。
しかし、今年から形式が変わり、25問の小問で構成されるLegal Research and Citationsセクション、Closed Memorandumの一部を作成するLegal Writingセクションに分かれることが最後の講義で明らかになりました。
当然みんな大混乱です。
期末試験はClosed Memorandum形式なら講義を聞く意味はないだろうとみんな思っていたので、講義を真面目に聞いている人などほとんどいません。
対策をしようにも今年から試験形式が変わる以上過去問もないので、ほとんどのLLM生は勉強せずに試験に臨むことになりました。
試験直前に有志の努力により講義のアウトラインを作成しましたが、いかんせん試験直前に完成されたため、実際にはほとんど役に立ちませんでした。
もっとも、この試験を落とすことはNY Barを受けることができないことを意味しますので、大学側もさすがに単位はくれるだろうという安心感はありました。
試験時間
試験時間について、教授からは3時間と言われていました。
しかし、LLM生の1/3ルールが適用され、実際の試験時間は4時間でした。
この授業はLLM生しか受けていないのに本当に1/3ルールが適用されるのか?
だとしたら、教授が言っていたのはなんだったんだ?
本当は3時間じゃないの?とみんな思いつつも、3時間では到底終わることのない分量でしたので、私を含むほとんどのLLM生は4時間をフルに使って答案を書くことになりました。
試験形式
この試験はOpen Book Examです。
インターネットを含む全ての資料を閲覧することができます。
AIは禁止ですが、最近のGoogleの仕様では何かを調べると自動的にトップにAIの回答が出てきてしまいます。
これは大丈夫なのか?と思いつつも特に何も言われることはありませんでした。
最初に小問パートを解きましたが、すぐにわかる問題はほとんどないので、一つ一つ資料を当たりながら解いていたところ、あっという間に時間が経ってしまい、Legal Writingセクションの時間が足りなくなってしまいました。
Legal Writingセクションの方が自信があったのですが、時間に追われて中途半端な答案になってしまい、若干後悔しています。
全ての問題に解答し、これで落とされることはないだろうというのが終わった時の感想でした。
むしろこれ以降のテストの方がやばいので、このテストはソフトウェアの使い方を確かめる練習という意識が強かったです。
Civil Procedure
2つ目の試験はCivil Procedureです。
これは僕が一番力を入れて勉強した科目です。
1Lのクラスですので、良い成績を取ろうと必死になっているJDたちと競い合わなければいけません。
普通に立ち向かっても勝てるわけがありません。
答案の採点方法
答案は全て匿名で採点されます。
ですので、どの答案がJDのものでどの答案がLLMのものかは分かりません。
しかし、拙い英語の答案であればこれはLLMの答案だろうという推定が働きますので、LLM生の回答だとわかってしまう可能性はあります。
特に日本人留学生だと講義中のコールドコールで苦労しますので、教授が拙い英語の答案を見た場合、「これは、英語が苦手なあの日本人学生の答案かもしれないな」と思っても不思議ではありません。
大学側から見ればLLM生はお客さんですので不可にすることはほぼあり得ないと考えられますが、試験を受ける前は不安で仕方がありませんでした。
過去問について
ほとんどの試験科目では、Libraryのサイトに過去問と上位3人までの解答が掲載されています。
試験科目によっては、教授自らが試験を解説したExam Memoも用意されています。
Civil Procedureはまさにこのタイプで、過去10年分ほどの過去問、上位3人の解答、Exam Memoを活用することができました。
特にExam Memoが凄まじく、教授自らが時間内に書き上げることを想定した模範解答を用意してくれています。
おかげで主要な論点の論証を用意する手間が省けるほか、当てはめの仕方まで学ぶことができます。
通常はStudent Answerを見て答案の書き方を学ぶのですが、この科目に限っては教授の模範解答を見る方がよっぽど勉強になりました。
Exam Memoでカバーされていない部分がある場合にはStudent Answerを参照すると言ったスタイルで勉強を進めました。
試験が好きな教授
教授もシカゴ大学のロースクール卒業なのですが、どうやら首席で卒業したそうです。
毎年律儀に模範解答を含めたExam Memoを出していることからすれば、こういった試験が本当に好きなのだろうと思います。
過去問の内容は毎回時事ネタが織り込まれていて、イーロンマスクのSpace X、Twitter(及びマストドン)、Chat-GPTなどその年に流行ったものが過去問の題材となっていました。
そういった試験大好きな教授が作ることもあり、試験はとても難しいです。
時事ネタを絡めた事例に、授業で扱った論点の多くを含めてきます。
事例に含められなかった問題は、大問2や3といった別の大問で扱われ、結果的に授業で扱った内容のほぼ全てをカバーすることになります。
さらに、最後の大問はいわゆるポリシー問題で、今ある法律の改善案を述べよといった問題や、架空の法律案に対しメリットデメリットを比較して自分の意見を述べよといった問題が出されます。
正解はなく、授業で学んだ内容を踏まえてどのように分析するかということが問われます。
覚えるだけでは解けないロースクールの試験
ロースクールの問題はどれもそうですが、資料を見たからといってすぐに答えがわかる問題など出ません。
授業で扱った知識を問うのではなく、それを活用してどのように考えるかが問われます。
そのため、授業の内容を暗記しても点は取れないですし、アウトラインを見るだけでは点は取れません。
規則の内容や論証を確認するために資料を見て、あとは自分で考えて答案を書くことになります。
最近の時事ネタを調べれば今年の問題も予想できるのでは?と思いましたが、僕にはAIくらいしか思いつかず、しかもChat-GPTは去年の試験の題材となっていたので、試験を予想することは諦めました。
実際の問題はドラマの内容を題材にしていたらしく、僕には分かりませんでした。
試験の難しさについて
今年の内容は特に難しかったらしく、ただ事例にある問題を検討するだけでは足りず、クライアントの要望(できるだけ早く手続きを済ませたい)に応えるためにはどのような戦略で訴訟に臨めばいいかといった、極めて実践的な内容が問われました。
実務経験のない1Lにとってはなかなか難しい内容です。
しかし、1Lはとにかくめちゃくちゃ勉強するので、どんな問題であろうとほぼ完璧に答えてきます。
成績分布の関係上、多くの生徒が自分の成績に落胆することになってしまいますが、アメリカの学生のレベルの高さが如実に感じられます。
LLM生の成績
そんな1L生と競わないといけないのかと思うかもしれませんが、どうやらそうでもないようです。
おそらく、LLM生はJDとは別に成績がつけられています。
1Lと同じ土俵で戦っていたら、中央値はおろかCすら取るのは難しいでしょう。
しかし、僕の成績は中央値に近い成績(つまりB)となっていました。
自分の出来を踏まえても多くのJDを差し置いてBになるほどの答案だったとは考え難いので、JDとLLM生は別の土俵で成績がつけられているのだと思います。
大学の資料によると、教授がつけた成績は一旦教務課が確認して、その後生徒に公表されるそうです。
教授が採点する段階ではJDとLLM生関係なく成績がつけられるのでしょうが、教務課がLLM生の成績を調整しているのだと思われます。
ちなみに、この科目はOpen Book / No Internet Examでした。
インターネットはあってもおそらく役に立ちません。
Business Organization
3つ目のテストはBusiness Organizationです。
これは日本でいう会社法に相当します。
取締役の義務、義務違反を問うための法的手段などを勉強します。
これは一般的な3単位の科目で2L、3L及びLLM生が受講します。
2つのクラス
秋学期では、2つのBusiness Organizationが開講されていました。
月水木のクラスと火金のクラスです。
人気があったのは月水木のクラスで、教授がハーバード卒だからということで選ぶ生徒が多かったです。
僕は別にハーバード卒という肩書には惹かれなかったので、他科目との関係から火金のクラスを履修しました。
授業の内容は異なりますので、試験の内容も別々になります。
講義の内容
講義では、会社法の重要な判例を読み、議論する形で行われました。
コールドコールが好きな教授で、判例のかなり細かい部分まで聞いてきます。
一つの判例について何度も質問されるので、当てられるとかなり大変でした。
教授は去年からの担当だったので、過去問は1年分しかありません。
Student Answerも実践的というより芸術といえる内容で、とても素人が真似できる内容ではなく、参考になりませんでした。
おかげで、アウトラインしか頼れるものがありません。
試験形式
試験の形式は大問3つで、1つが事例問題、残り2つは判例比較という非常にシンプルな内容でした。
事例問題ならまだしも、判例比較は授業の内容をしっかり理解していない解けないので大変です。
大問全てできる必要はないよ、多少失敗しても大丈夫。
教授はそう言ってくれたので、とりあえず落とすことはなさそうだと安心していました。
試験を対策しようにも改めて判例を読み直すくらいしかできず、Civil Procedureのようにしっかりとした対策はできませんでした。
Chat-GPTに判例比較をお願いすることも考えましたが、講義で扱った判例はたくさんあるため、膨大な組み合わせの分析が必要であり現実的ではありません。
結局、試験時間中にアウトラインを確認して判例比較をするしかないだろうという結論に落ち着きました。
ギリギリだった試験
予想外だったのは、判例比較ではなくデラウェア州の法令比較が問われたことです。
授業で扱った判例法理が条文化されたものだったので、結局は判例について述べることになるのですが、準備していなかったので焦りました。
他LLM生が作成してくれたアウトラインに法令が添付してあったからよかったものの、それがなかったら法令の内容がわからず詰んでいたかもしれません。
試験時間は4時間でしたが、とにかくギリギリでした。
3時間では終わるはずもありません。
試験会場はJDとは別で、LLM生だけ個室に集められて行われます。
そのため、JDのスピードを気にすることなく試験を受けられることができました。
こちらもOpen Book / No Internet Examでした。
AIが使えない以上、ネットがあっても役に立たないと思います。
Competitive Strategy
これまでの法律科目とは打って変わり、これは完全な経済学の授業です。
ミクロ経済学の知識をベースに、企業が利益を上げるためにいかにリソースを配分するかを学びました。
僕は経済学の知識はあまりないのですが、シカゴ大学は経済学が有名だからということで履修してみることにしました。
LLM生は2人だけ
LLM生は僕ともう一人の日本人留学生の2人だけで、他は全てJD/MBA(ロースクールとMBAの2つを掛け持ちしている学生)でした。
実質僕たち以外は全てMBA生ということになります。
教授もChicago Booth所属で、そもそもLLMという制度すら知りませんでした。
あまりLLM生は受けない授業なんだと思います。
シラバスにも最低限のミクロ経済の知識が必要だよと書かれているので、敬遠する生徒も多いのだと思います。
とはいえ、講義形式なので教授が丁寧に説明してくれますし、知識がないからといって興味ある授業を取らないのはもったいないです。
多少の知識不足はいくらでも補えますので、積極的にチャレンジすることをお勧めします。
成績評価
成績評価は、毎週提出するShort paper(40%)、Mid-term Assignment(15%)及び期末試験(45%)という構成です。
授業では、MBAと同様に実際の事例をケースとして扱い、それについて議論する形で行われます。
生徒は事前にケースを読み込み、事前課題への回答を2-3ページで作成し、ペーパーは5点満点で採点されます。
Short paperはグループで作成することが許されていましたので、僕はもう一人の日本人留学生とチームを組み、週ごとに交代でドラフトを作成し、もう一方がレビューするというやり方で進めていきました。
毎週ペーパーを作成するのは大変でしたが、提出さえしていれば成績がつけられるので、期末試験が多少失敗しても単位はもらえるだろうという安心感がありました。
また、単に資料を読むより理論を実際の事例に当てはめてペーパーを作成するほうが勉強になります。
レベルが高いJDたち
Mid-term Assignmentは過去問をTake-Home Exam形式で行うようなものでした。大問が2つあり、1つはグループで作成可能、もう一つは各自で行うといったものでした。
個人で行うセクションは20点満点ですが、僕の点数は19点でした。
めちゃくちゃ高得点じゃん!と思うかもしれませんが、教授が公表した中央値はなんと19.12。
つまり、僕の成績は下位50%ということになります。
点数のばらつきはほぼないということになるので、これでは成績をつける意味が本当にあるのかと思いましたが、目立って悪い成績を取ることはなかったのでよしとしました。
Short paperも基本的には4点あたりの点数をキープしていたのですが、中央値を超えたのは1度だけで、他は全て中央値以下でした。
いかにJDのレベルが高いかが分かります。
まさかのClosed Book Exam
そして期末試験なのですが、なんとClosed Book Examです。
つまり、すべての資料が持ち込み禁止で、自分の頭にある知識だけで試験を解くことになります。
これにはJD生ですらも文句を言う始末でした。
何人かのJD生がOpen Book Examにしてくれないかと頼んでいましたが、「でも、実務でクライアントから聞かれたらいちいち資料を参照する暇ないじゃん?」ということであっさり断られていました。
教授のスタイルとして、毎年Closed Book Examにしているそうです。
Closed Book Examは大変ですが、Short paperとMid-term Assignmentですでに成績の55%分を消化しているので、テストの出来に関わらず単位は来るだろうと思っていました。
スケジュールを延期し、最終日に
実際はCivil Procedureと同じ日に試験が行われていたのですが、試験は1日1科目までという大学の寛大なルールにより、この科目を最終日に延期しました。
公式な試験時間は3時間なので、4時間問題とにらめっこしながら解答を作成しました。
満足のいく出来ではありませんでしたが、単位が来たので一安心です。
秋学期で一番面白かった講義
個人的にはこの授業が秋学期で一番面白く、大変ではありましたがとってよかったです。
ミクロ経済の知識も身につけることができました。
教授の最後の言葉は「Create Value!」でした。
僕たちはなんのために勉強しているのか。
それを再確認させられる言葉でした。
終わりに
いかがだったでしょうか。
基準以下の成績を取ると卒業できないという決まりがあるために、とにかく試験に向けて必死に勉強することになります。
試験期間中は気が狂いそうになるほど追い込まれました。
特に僕の場合は4つも試験があったので、勉強しても勉強しても終わる気がしませんでした。
もし単位が取れなかったら、秋学期の勉強がすべて無駄になる。
冬学期以降は受講する講義の数を少なくしたかったので、なんとかここで4つ単位を取るために頑張りました。
これをいうのはこの長い記事の最後にしようと思っていましたが、実際のところ単位は普通に来ます。
極論を言えば、何かしら書けば単位は来ると思います。
カンニングをしたり、明らかに的外れなことを書かない限り、単位を落とすことはないでしょう。
しかし、勉強を全くしないで単位が取れるかというとそれはないと思います。
いくら単位は来るとはいえ、そのために多かれ少なかれ勉強する必要があります。
特に最初の秋学期はとにかく不安です。
単位を落としてはならないと必死に勉強することになるでしょう。
僕も相当勉強しました。
10月から12月の間ブログを更新していないのは、勉強に集中していたことが理由です。
一度単位が来てしまえば、勝手がわかるのである程度余裕を持って講義に臨むことができます。
僕も冬学期は履修する講義の数を減らし、授業以外のことに費やす時間を増やしています。
成績優秀者の表彰制度もないので、現地での就職を希望するならともかく、いい成績を取ろうと努力するモチベーションはあまりありません。
LLM生の成績は中央値付近に収束するので、いい成績を取ろうと思うとよっぽどいい答案を書かないと難しいと思います。
そこまでする意味があると考えるかは人それぞれではないでしょうか。
僕の場合は授業の勉強はほどほどに、興味のあることに全力集中という考えです。
単位は落とさない程度に勉強していこうというスタンスです。
以上がシカゴ大学の期末試験の概要及び僕の秋学期の経験談でした。
皆さんだったら、どのように講義に臨むでしょうか。
この記事を読んで、LLMでの試験のイメージを膨らませた上で実際の留学に臨んでいただけたらと思います!
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プロフィール
Ryo
こんにちは、Ryoといいます。 このブログは留学記です。 このブログのテーマは、『日本にいたらできないようなチャレンジをする』こと。 留学で経験したこと、考えたこと、感じたことをレポートします。 このブログの目的は3つあります。 人脈を増やすこと 学んだことをアウトプットすること ブログを継続すること このブログが少しでも皆様の役に立ってくれたら幸いです。