父はハーバード、息子はシカゴ

父はハーバード、息子はシカゴ

こんにちは、Ryoです。

前回の記事で、尊敬する岩瀬大輔さんがハーバードビジネススクール(MBA)を卒業していたことに触れました。

人生に攻めを
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ハーバードMBA留学記を何度も読み返し、自分に負荷をかける こんにちは、Ryoです。 僕には、アメリカに来てからも何度も読み返している本があります。 それが、岩瀬大輔さ……

ハーバードに留学した父

ハーバードと聞いて、思い出すのは父のこと。

何を隠そう、父もまたハーバードに留学していたのです。

息子として贔屓目に見ても、岩瀬さんとは比べることもできませんが、それでも数々の影響力ある卒業生を輩出してきたハーバードで学んだことは事実。

ケネディをはじめ、多くの大統領を輩出している名門中の名門大学です。

最近だと、オバマ元大統領もハーバードロースクールの卒業生です。

ちなみに、オバマは1992年から2004年までシカゴ大学ロースクールで憲法を教えていました。

僕はシカゴ大学に留学しているわけですが、ハーバードは選択肢として考えなかったの?と思う人がいるかもしれません。

結論から言うと、僕がハーバードに行きたいと思うことはありませんでした。

父親と同じところに留学に行くのもなあ。
どこか違うところに行ってユニークさを追い求めるべきだろう。

そう思ったのが大きな理由です。

もっとも、大学の成績が低く合格の可能性がなかったこと、TOEFLを受けていないため出願することができなかったというのが実際問題として大きいですが。

そうだとしても、仮にアメリカのロースクールの中から進学先を自由に選べるとしたらどこに行きますかと聞かれたら、僕はシカゴ大学を選んだでしょう。

イェール大学(弁護士に可能性はほぼないですが)、スタンフォード大学も魅力的ではありますが、シカゴという街に興味があったこともあり、僕が一番行きたかった大学はシカゴ大学でした。

ちなみに、あらゆるアメリカの大学で一番行きたいところは?と聞かれたら、迷わずカーネギーメロン大学の計算機科学科を選びます。

どうでもいいことですが。

シカゴに、カネの匂いを感じた

なぜ、シカゴ大学に興味を持ったのか。

理由としては、ただ一つ。

カネの匂いがするからです。

シカゴ大学を創設したのは、石油王と呼ばれたジョン・ロックフェラー。

アメリカの石油市場を独占し、史上最大の資産を持つ富豪とも言われています。

そのロックフェラーが「中西部にも(息子が進学した)ブラウン大学のような学問の場が必要」ということで莫大な資金提供をし、設立されたのがシカゴ大学です。

ロックフェラーが設立した大学は、シカゴ大学に加え、自身の名を冠したロックフェラー大学があります。

そのほか、イェール大学やハーバード大学をはじめ、ロックフェラーが財産支援をした大学は多岐にわたります。

さらに、シカゴは金融の中心地でもあり、世界有数の先物商品取引所であるシカゴ商品取引所(Chicago Board of Trade、CBOT)もあります。

超大物ギャングであるアル・カポネも禁酒法時代、シカゴを根城にしていました。

アメリカといえばマネーですから、そういうカネの匂いのする場所で学んでみるのも面白いだろうと思ったわけです。

知識を創出し、人類の生活を啓発せよ

もちろん、真面目な理由もあります。

大学のモットーは”Crescat scientia; vita excolatur (知識を創出し人類の生活を啓発せよ)“。

モットーにもある通り設立当初から研究を重視し、特に経済学は「シカゴ学派」として有名です。

僕が初めてシカゴ大学のことを知ったのは、ナオミ・クラインの書いた「ショック・ドクトリン」を読んだことがきっかけです。

この本では、シカゴ学派の提唱者となったミルトン・フリードマンが推進した「Disaster Capitalism(惨事便乗型資本主義)」が批判されています。

この本では、ピノチェト政権下のチリをはじめ、ソビエト連邦の崩壊、イラク戦争、ハリケーン・カトリーナといったさまざまな危機がシカゴ学派による至上主義改革を推進するために利用されたことが主張されています。

この本に出てくる話はあまりに悲惨で、これを読んだ僕もシカゴ学派がやったことはなんて酷いんだと思いました。

しかし、今僕はこうしてシカゴ大学に留学しています。

悪名が無名に勝ったということです。

事実、南米からシカゴ大学に来る人はかなり多いです。

シカゴ流の経済学を学びたいと思って、シカゴ大学を選んだわけではありません。

僕が進学したのはロースクールですし、シカゴ学派は昔ほど急進的であるわけではないです。

しかし、基礎研究を重視し、社会に大きな影響を及ぼしているシカゴ大学で学ぶことは、自分にとって有益だろうと思い、シカゴ大学を選ぶに至りました。

進学してみて、授業のレベルは高く、在籍している学生も優秀なので、進学して本当に良かったと思っています。

東海岸の学校は政府機関と距離が近いため実際の政策に関心を持つ傾向が強く、西海岸の学校はベンチャーと距離が近く今あるビジネスに関心を持つ傾向が強いです。

いずれかに偏りすぎることなく、研究に没頭できる風土、地理的環境。

これこそがシカゴ大学が高い評価を受けている要因です。

その意味で、本気で学びたいと思うならシカゴ大学以外考えられないだろうと思っています。

ちなみに同じくアメリカの真ん中にあるデューク大学もおすすめです。

感銘を受けた3人の女性思想家

ナオミ・クラインの話に戻りますが、ショック・ドクトリンを読んで以来、彼女は僕が感銘を受けた3人の女性思想家のうちの一人となりました。

その3人の思想家とは、ハンナ・アーレント池田晶子ナオミ・クラインです。

キリがいいので3人をあげていますが、影響の度合いとしてはハンナ・アーレント>>>池田晶子>>>>>>ナオミ・クラインといった感じで、ナオミ・クラインの影響はほとんどありません。

そもそも彼女の本はショック・ドクトリンしか読んでいません。

ハンナ・アーレント

もっとも影響を受けたのは、ハンナ・アーレントです。

彼女の書いた『人間の条件』は、僕が最も読み返している本と言っても過言ではありません。

何度も読み返した文庫本はボロボロになり、表紙が破れるほどになっています。

折に触れ、何度も何度も読みました。

『人間の条件』に出会ったのは、東大で受けた社会科学の授業がきっかけです。

教授が現代の政治哲学に大きな影響を与えている本ということで挙げていた本で、なぜだかその本を読んでみようという気になり、いつの間にか何度も読むことになっていました。

全体主義の研究者として知られるアーレントは、『人間の条件』のなかで人間が行なっていることは何かという壮大なテーマについて論じました。

「人間は条件づけられた存在」であるとして、人間の中心的な活動である労働、仕事、活動の3つの能力を分析しています。

とても難しい本なので万人に勧められる本ではありませんが、個人的にはこの3つの能力の分析に加えて、近代科学の発展について述べた章も面白くて気に入っています。

手元に本がないので詳細は書けませんが、至極簡単にまとめると、現代の科学偏重主義の原因となったのは望遠鏡の発明が大きく影響しているということです。

望遠鏡の発明により、太陽が地球を回っているのではなく、地球が太陽の周りを回っていることが明らかになりました。

これまで人類は、神は人間を中心としてこの世界を作ったと信じていましたが、そうではないどころか、神はその事実さえ教えてくれなかったのです。

人間は、自分たちで望遠鏡を発明するまで、地球が太陽の周りを回っていることに気づけなかったのです。

真実を何一つ教えてくれない神など、信用する必要があるのだろうか。

望遠鏡の発明により生じた神への懐疑は、デカルトの懐疑論に発展しました。

そこから物事の正当性は自分たちで確かめねばならないということで科学が重視されるようになったわけです。

人々が科学を正しいと信じるようになったのは、望遠鏡に端を発していると考えると深いですよね。

池田晶子

池田晶子の本は、それはもう何度も読みました。

母が買ってくれた『14歳からの哲学』に始まり、大学生になってからも彼女の著作を次から次へと読んでいきました。

エッセイ集を含め、おそらくほぼ全ての本を読んだのではないかと思います。

大学卒業後、アメリカとカナダを1ヶ月ほど旅行する機会があったのですが、その時に泊まったのがカナダのモンテベロにあるシャトーモント。

G7サミットが行われた有名なホテルでもあるのですが、暖炉のある大きなロビー(上の画像)でひたすら読んでいたのが『14歳からの哲学』。

他に読む本はなかったのかと突っ込まれそうな気もしますが、池田晶子さんが若いうちに読んでおかないと大人になったら理解できないよと言っていたので何度も読んでいました。

さすがに今となって池田晶子やナオミ・クラインを読み直す機会は減りましたが、アーレントだけは今でも手に取ります。

アーレントは女性思想家という括りではなく、僕が感銘を受けた思想家というカテゴリーでもトップ3に入りますね。

その他の人については、機会があれば書きます。

祖父はハーバード、父はシカゴ、娘は?

ハーバードの話から始まり、いつの間にか池田晶子まで話が展開してしまいました。

残念ながら、父が留学していた時は僕は生まれておらず、英語を身につける機会はありませんでした。

父親も純粋な日本人ですし、英語は苦労したはずなので、その教訓をもとに僕に英語を習わせてくれていたらなあと思う次第です。

そんな僕も娘が生まれ、いつの間にか父親になりました。

娘には多くを望みませんが、英語だけは喋れるようになってほしいと思っています。

学歴などはいらず、英語圏の大学に行ってくれれば十分です。

祖父はハーバード、父はシカゴ、娘は◯◯

なんて記事をいつか書いてくれるでしょうか。

娘ももちろん可愛いですが、個人的には息子が生まれ、父を超えてくれるのを楽しみにしています。

第二子の誕生はそもそも実現するのかすら分かりませんが、私の子供には英語に困らず、世界で活躍する人間になってもらいたいと思います。

プロフィール

Ryo

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こんにちは、Ryoといいます。 このブログは留学記です。 このブログのテーマは、『日本にいたらできないようなチャレンジをする』こと。 留学で経験したこと、考えたこと、感じたことをレポートします。 このブログの目的は3つあります。 人脈を増やすこと 学んだことをアウトプットすること ブログを継続すること このブログが少しでも皆様の役に立ってくれたら幸いです。

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